バイクの事故を無くしたい。

高校を卒業して、早20年以上の歳月が流れました。
今では私も結婚し、家族を築き、子供も大きくなって学校に通う毎日。
ですが、春が過ぎて梅雨を迎える頃になると、思い出す人がいるのです。

その人は同級生なのですが、小学校・中学校・高校と同じ学び舎で学び、
休み時間には体を動かして遊びました。幼馴染、というわけでもないのですが、
お互いがお互いの事をよく知っており、まるで「家族」の一員のような存在でした。

中学を出て高校に進学すると、彼は原付の免許を取得して原付バイクに乗っていました。
親友の家に集まって遊ぶとき等、彼はよく愛車に乗って駆けつけたものです。
私は免許を持っていなかったので、彼のバイクの自慢話によく耳を傾けたものです。
バイクの話をする時の彼の笑顔は、とても印象的でした。
本当にバイクが好きだったのだと思います。

楽しかった日々もようやく終わりを告げ、高校を卒業。
私は高校在学中に大学進学を目指し始めたのですが、
全ての受験に失敗し、地元を離れて予備校生活を始めることになりました。
彼は地元の企業に採用され、高校を卒業すると同時に就職するという道を選びました。

またいつの日か会える。

そう信じ、お互い別々の道を歩み始めたのです。
昔は携帯電話もなく、ましてやメールなんていう便利なツールすら無かった時代。
実家や故郷の友人と連絡を取るには、電話しかありませんでした。
公衆電話の前で10円玉を沢山握り締め、実家や友人達に電話をかけまくりました。
彼は仕事で大変だったとは思うのですが、いつでも相談に乗ってくれ、励ましてくれました。

職場で一人の女性に出会い、お付き合いを始めたそうなんです。
本当に嬉しかったですね。
同じ釜の飯(給食)を食った仲でもありますし、仕事も恋も両立し、
いずれは結婚して立派な家庭を築いて欲しいと願いました。

ある日、勉強が一段落してテレビを見ていると、私の故郷でバイクによる事故が発生し、
運転していた男性が全身を強く打って亡くなったというニュースが流れていました。
大変だな・・
と思い画面を見つめていると、被害者の方の名前を見るなり一瞬時が止まりました。

そう、彼でした。
信じられない、という言葉で片付けられるもの
ではなく、頭の中が真っ白になり、次の瞬間声を上げて泣き崩れました。
ついこないだ、元気な声を聞いたばかりなのに。
相談に乗ってもらったばかりなのに。
今度地元に帰る事があれば、一緒に遊ぼうと約束していたのに。
聞くところによると、スピードオーバーによる転倒だとの事でした。

本当に辛かったですね。
予備校生という事もあり、直ぐには故郷に戻る事も出来ないまま、
暫くは茫然自失の日々を過ごしていました。
彼とは「大学に絶対合格する」という約束を交わしていたので、必ず合格して、墓前に参ろう。
そう決意し、勉強に取り組みました。

一年後、ようやく大学に合格して地元へ帰省し、
何よりも彼が眠る墓地へ足を運び、墓前へ挨拶させて頂きました。
彼の事は絶対に忘れませんし、今でも心の中で生き続けている。
そう信じています。
バイクは本当に便利なもので、価値を創出出来るものだからこそ、
ルールをしっかりと守る事で安全運転を心掛けて頂きたい。
そう願っています。