電動化が進むバイク市場の今
ガソリン車から電動モビリティへの移行が進む中、バイク業界でもEV化の動きが加速しています。世界全体では2020年時点で二輪車市場の約5%が電動モデルとされ、2030年にはその割合が20%まで伸びる見込みです。アジアを中心に通勤手段としてのEVバイクが浸透しつつあります。
国内の状況を見ると、原付一種クラスでの導入が目立ちます。ホンダは1994年に市販電動バイクをリリースしており、ヤマハも2002年に「パッソル」を販売開始。カワサキも2035年までに主要モデルの電動化を掲げるなど、主要メーカーの取り組みが本格化しています。とはいえ、日本全体で見ればEVバイクの存在はまだ限定的であり、多くのライダーにとっては選択肢のひとつに過ぎない段階といえそうです。
まだ乗り越えるべき現実的な壁
EVバイクの普及には、いくつかの課題が立ちはだかっています。まず大きな壁となるのが航続距離です。現在の技術ではバッテリーの容量に限りがあり、長距離ツーリングには不安が残ります。容量を増やせばその分車体が重くなり、扱いやすさが損なわれるケースも少なくありません。
また、価格帯も普及を妨げる要因となっています。高性能なEVバイクは一般的に高額であり、エントリーユーザーにとっては手が届きにくい存在です。モデル数の少なさもあり、選択肢が限られているのも現状です。
さらに、インフラ面の整備も課題です。バイク向けの充電ステーションやバッテリー交換拠点が全国的に整っているとは言えず、都市部を除けばEVバイクの利用に不便さを感じるケースもあるでしょう。認知度は高まりつつあるものの、「実際に乗ったことがない」という声は根強く、実用面での体感が普及を左右する段階にあります。
環境と暮らしにやさしい乗りものへ
こうした課題がある一方で、EVバイクには多くの可能性が期待されています。環境面での利点は明らかで、走行中に排気ガスを出さないため、CO2排出の削減に直結します。また、エンジン音がほとんどしない静かな走行は、都市部の騒音問題の軽減にもつながると考えられています。
SDGsの観点からも注目されています。とくに「クリーンエネルギーの促進」や「気候変動への具体的な対策」といった目標に関連しており、EVバイクは新たな交通手段として社会的な期待を背負っています。
今後はバッテリー交換式モデルや充電時間の短縮技術など、使いやすさを高める取り組みが進むと見られています。モデルの多様化も予想され、街乗り用から長距離ツーリング向けまで、用途に応じた選択肢が広がることでしょう。静かでクリーンな未来の足として、EVバイクは確実にその存在感を高めつつあります。