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ヤマハの新スマートヘルメットにAR機能搭載

視界に情報を重ねるAR技術に注目

ヤマハ発動機が出願した特許情報から、AR(拡張現実)技術を応用したスマートヘルメットの設計構想が明らかになりました。HUD(ヘッドアップディスプレイ)を活用し、ライダーの視界上にナビや車両情報などを表示する構成が想定されています。情報はバイザー越しに直接表示され、視線を移さず確認できる仕組みです。

この特許では、ヘルメット内部に赤外線センサーと最大4つの小型カメラを搭載し、頭の動きや視線を検出してAR表示の位置を最適化する設計がされています。これにより、乗車姿勢が異なるスポーツタイプやクルーザーでも、違和感なく情報を得られる様に考えられているのです。

あくまで技術開発段階の情報ではありますが、こうした機能が将来的に製品へ反映されれば、ライディング中の視認性と快適性を高める新たな可能性につながるでしょう。

安全性と利便性の両立を目指す設計

ヤマハが出願した特許内容には、安全面への配慮も見られます。透明なレンズを通して通常の視界を確保しつつ、その上にAR情報を重ねるという構成により、万が一表示系が故障してもライダーの視野を妨げにくいと考えられます。

情報はライダーの目線に応じて移動し、走行時の状況変化に応じて表示位置を動的に調整。視線を逸らすことなく、スピードメーターやナビ情報などを把握できるように想定されています。また、AR表示を活用すれば、周囲の車両や障害物の位置も視覚的に把握しやすくなる可能性があり、リスク回避にもつながるかもしれません。

現段階ではヤマハから具体的な製品仕様や機能の発表はなく、これらはあくまで特許に基づいた技術的可能性として捉える必要があります。ただ、他社製スマートヘルメットで見られるような通信機能や音声操作との連携といった機能は、今後搭載が期待される分野といえるでしょう。

実用化の時期は未定ながら今後に期待

このARスマートヘルメットに関する開発は、現在のところ製品化の発表には至っていません。ヤマハ発動機は2023年から2024年にかけて関連特許を複数出願しており、一定の技術検証が進んでいる段階と見られます。具体的な市販モデルや試作車の存在は確認されていないため、実走行や販売時期の見通しは今後の動向次第です。

一方で、世界的にスマートヘルメット市場は年々拡大しており、AR機能を取り入れた製品もすでに一部で登場しています。ライダーの安全性や快適性を高める要素として、AR技術の注目度は高まり続けるでしょう。

ヤマハが今後この分野でどのような開発を進めていくのか、特許出願の内容を手がかりにしながら、今後の発表に注目が集まっています。

カワサキが水素エンジン試作車を公開

ニンジャH2 SXをベースにした水素試作車

カワサキモータースは、2023年12月12日に開催された「グループビジョン2030」の進捗報告会にて、水素エンジンを搭載した二輪車の試作車を初公開しました。ベースとなったのは、大型スポーツツアラーモデルである「Ninja H2 SX」です。外観はベース車の特徴を色濃く残しつつ、後部に水素タンクを搭載するなど、新しい要素が加えられています。

今回の試作車は、量産メーカーとして初めて本格的な走行を視野に入れて開発された水素エンジン搭載バイクとして注目されています。展示された車両には実際に水素タンクが搭載されており、走行用エンジンとして完成度の高い仕上がりが見られました。デザイン面ではH2 SXのボリューム感や空力性能を活かしながら、水素仕様ならではのパッケージングに再構成されています。

この車両は単なるモックアップではなく、2024年からの試験走行が予定されており、公道やクローズドコースを使った走行データ収集が始まります。カワサキの本気度が感じられる一台です。

水素燃料の直噴エンジンを搭載

この試作車の心臓部となるのは、998ccの直列4気筒スーパーチャージドエンジンです。従来のガソリン仕様とは異なり、水素を筒内に直接噴射する「筒内直接噴射」仕様に変更されています。水素はガソリンに比べて燃焼速度が速く、制御が難しい特性を持つため、ノッキング防止や燃焼安定の工夫が重要です。今回のエンジンはそうした課題への対応を踏まえた設計になっており、従来の出力感をなるべく維持しつつクリーンな燃焼を目指しています。

燃料供給には、トヨタの燃料電池車「MIRAI」に採用されている高圧水素タンクを流用。2基のタンクで合計約2kgの水素を供給できる設計となっており、市街地走行や試験走行には十分な容量です。車体後部のスペースを活用して配置されており、低重心を意識した取り付けが施されています。

また、従来のガソリンエンジンと異なり排出ガスにCO₂を含まないため、走行時に温室効果ガスを出さないという環境面でのメリットも大きいとされています。電動バイクとは異なるエネルギー選択肢として、水素エンジンの存在感が改めて注目されていくでしょう。

実用化は2030年代初頭を視野に

この水素エンジンバイクは、2024年からの本格的な試験走行を皮切りに、2030年代初頭の実用化を目指して開発が進められています。車体構造の最適化、水素供給設備の整備、安全基準への対応など、課題は多岐にわたりますが、カワサキは段階的にステップを踏んで実用化に向けた取り組みを加速中です。

また、同社は水素バイクの開発を単独で完結させるのではなく、川崎重工業を中心とするグループ企業や、自動車業界の先進企業とも連携。水素供給網や法規制への対応といった社会的課題にも関与しており、技術と社会の両面から環境対応型モビリティを模索しています。

将来的には、同様の技術を他のモデルにも展開する可能性があり、バイク市場における選択肢の拡大が期待されています。電動化一辺倒ではないアプローチとして、水素エンジンバイクが持つ価値は、今後さらに注目を集めていくことでしょう。

直感的に操作できるヤマハの次世代ハンドルスイッチ

ヤマハが新たに開発した次世代ハンドルスイッチを発表!

2024年6月に、ヤマハから新たなハンドルスイッチが発表されました。
ヤマハでは「次世代ハンドルスイッチ」との名称をかかげて開発しており、従来のハンドルスイッチには見られないさまざまな斬新な工夫や新技術が取り入れられていると言われています。
もともとハンドルスイッチは注目が集まりにくいパーツですが、ヤマハの新技術、それもかなり力をいれて開発したのがうかがえるアピールぶりからバイク好きの間でその内容が注目されている状況です。

バイクの運転中は、グリップを握りつつさまざまな操作を行うことになります。
それだけにハンドルスイッチの使いやすさはバイクの性能や安全性を左右する重要なパーツということになるのですが、ヤマハは今回の新型ハンドルスイッチにおいて「今後のスタンダードになりうる次世代スイッチを目指した」としています。
ここまでヤマハが自信を持って世に送り出した次世代ハンドルスイッチとはどのようなものなのでしょうか?

注目の次世代ハンドルスイッチの内容を解説!

まず目立つ特徴として挙げられるのが、ウインカーです。
従来は左手の親指でレバーを左右にスライドする操作が行われますが、今回の新型ハンドルスイッチでは左右スイッチをフルクリック(押し込む)仕様になっています。
しかも操作から15秒経過、もしくは150メートル走行した時点で自動的にキャンセルする仕組みになっているほか、スイッチを半押しすると3回点滅させることができます。
この3回点滅によって、車線変更時の操作が格段にスムーズにすることができます。

さらにコンパクトな仕上がりを目指し内部構造においてもさまざまな工夫が盛り込まれており、ねじ曲げが可能なフレキシブル基盤を採用することでコンパクト化と直感的な操作の両方を実現しています。
スイッチについてもユニバーサルデザインを重視しており、乗り慣れた人でも、はじめてこのハンドルスイッチを使う人でも直感的かつストレスフリーに操作できるよう配慮されています。
一方で走行モードの変更に関する操作では、左手の親指で操作するジョイスティックを採用しています。
こちらはスマートフォンやゲーム機の操作になれたライダーとの親和性を配慮した造りとなっており、単に技術だけでなく、ライダーの傾向にも配慮したつくりになっているのも大きな特徴です。

バイクの技術革新というと、エンジンなど目立つパーツに目が行きがちですが、ヤマハはこの次世代ハンドルスイッチによって手元から快適・安全なライディング環境の実現を目指した形となります。
「さすがヤマハ!」との評価も評価もすでに聞こえており、今後この次世代ハンドルスイッチが本当に「スタンダード」になるのか、注目した見守っていく必要がありそうです。

BMWが自動シフトアシスタントを発表

BMWが発表した自動シフトアシスタントとはどんなもの?

2024年5月に、BMWモトラッドが新しい技術を採用した「自動シフトアシスタント(ASA)」を発表して話題になりました。
この発表はヨーロッパで行われたものですが、日本のバイク好きの間でもいち早く広がり、「どんな技術なのか」と注目が集まっています。

「自動」という名称が使われているように、操作の自動化を大胆に取り入れているのがこの新技術の大きな特徴です。
なんとクラッチとギアシフトの操作を自動化することに成功したもので、これによってライダーの負担を大幅に軽減することが可能になっています。

他のシフトアシスタントのシステムとの違いは?

では、従来のシフトアシスタントシステムとどのような点で異なるのでしょうか?
自動化のためにどのような新しいメカニズムが導入されたのか?この点が気になる方も多いはず。
今回のBMWの自動シフトアシスタントのポイントとなっているのは、電気機械式アクチュエーターを2つ搭載している点です。

このアクチュエーターによって手動でのクラッチ操作が不要になるだけでなく、クラッチ操作そのものが正確になることでライディングをよりスムーズに、快適にすることができます。
クラッチ操作が正確になれば安全性が高まるのはもちろんのこと、ライディングの爽快感を高める効果も期待できます。
さらにモードが2種類用意されており、まず「M」シフトモードでは足を使ったギアチェンジが可能となっており、自動化だけでなくライダー自身でのギアチェンジも行うことができます。
一方、「D」シフトモードではシフトポイントをエンジン制御ユニットが自動的に選択する機能が搭載されています。

これらの機能によってシフトアップの際に生じる衝撃が和らぐほか、周囲のバイクや車と接触するリスクを軽減できるとされています。
例えば、タンデムの際に衝撃によってライダーと同乗者のヘルメットが接触するリスクが軽減されたり、前方衝突警告と組み合わせることでより安全な走行を可能になったりといった効果が期待されています。

この新技術の採用モデルについて

このように単に自動化してライダーが「楽になる」だけでなく、快適な運転とライディング体験をもたらす機能も多く備えている自動シフトアシスタント機能。
そうなるとどのモデルに採用されるのかが気になります。
まだこの技術が発表されてから時間が経っていないため、具体的な採用モデルについてはまだ明らかになっていないのが現状です。

ただし、BMWモトラッドがこの技術の説明のために公開したエンジンは「R1300GS」のものとよく似ていたため、バイク好きの間ではR1300GS系のモデルに採用されるのでは?との見方が広がっています。
おそらく、まずこのタイプのモデルに採用されたうえでその後さまざまなモデルに採用されていく形となるのでしょう。
いずれにせよ、実装される日を楽しみに待ちたいところです。